鉄瓶の使い方

◆ 鉄瓶の使い方  鉄瓶は毎日使うことが一番のお手入れになります。鉄瓶の内部には金気止めという処理をしてあります。これは炭を燃やして1000度以上の高温で焼く仕上げ方法です。この金気止めという工程は、明治時代盛岡で大火災があり、その時鉄瓶工房が焼けました。焼け跡から出てきた鉄瓶を使うと、錆びずに強度が増しており、大火事で発見された処理方法でした。この作業によって鉄瓶内部には酸化皮膜という皮膜が出来ます。これがさび止めの役割をしています。この皮膜は、剥がれてきますので、その間に湯垢を付けます。湯垢とは、水の中に含まれるミネラル、主にカルシウムが固まってできる薄い膜のことです。この湯垢、ミネラル豊富なお水、井戸水とか、外国のミネラルウォーターをつかって鉄瓶でお湯を沸かすとすぐに付着します。数回沸騰させただけで湯垢がついてきます。湯垢がついてくると内部が白っぽくなってきます。そうするとサビなくなります。一部は赤茶けて錆びますが、気にすることはありません。サビは体にとって毒ではありません。万が一、錆びた鉄瓶の赤水を飲んでも人間に害はありません。赤錆を沢山飲むとお腹がゆるくなる程度で、鉄瓶の錆は体に悪いことは一切無いという鉄器職人の共通意見です。錆の粉が湯飲みに入って、飲んでも平気です。鉄分は人間の体に元々あり、害毒はありませんので、ご安心ください。害はなくてもサビは嫌がられるので、使い続けるか、湯垢を付けて問題解決します。皮膜がはがれないうちに湯垢をつけると鉄瓶の内部はだんだんと白っぽくなり、もっと使い込むと完全に白くなり、1mm以上の厚みになることもあります。湯垢がつくと一晩お水を入れっぱなしにしても、全くサビなくなります。早ければ1週間、長くても3ヶ月で湯垢は付きます。ただし浄水器のお水を使うと、1年たっても湯垢がつきません。浄水器がミネラルも取ってしまうからです。正しく使えば、錆びがでても問題ありません。


◆ 鉄瓶の慣らし期間  最初の1ヶ月が要注意です。

1.
最初に鉄瓶の中を軽くゆすぎます。
2.
お湯を六分目くらいまでいれて一度沸騰させる。
3.
2〜3回沸かして、捨てます。濁りが無くなれば回数は問いません。 内部は決して触らない。鉄瓶の中は永遠に触ることはありません。鉄瓶に限らず、中国茶の急須も同じくです。(中国には"余計なことをする人"の意味で、急須の中を洗う者。と言うことわざがあります。)
4.
外側をふく場合は乾いた布で拭きます。
5.
使用後は中を空にして、必ずフタを取って乾かします。蓋の乗っかる部分とか、蓋の縁も念のため目視で濡れていないかチェックです。
6.
鉄瓶の余熱で中を乾燥させると楽です。鉄瓶が熱い間に蓋を取り、中に息をフーフーと吹きかけるとすぐに水分は蒸発します。ガスコンロの場合は、直接鉄瓶の底に当たらないようにしてください。ガスコンロの火が直接あたると、変色することがあります。
7.
緑茶を浸した布で表面を軽くポンポンと叩くように拭くと表面処理がなされます。油を飛ばしてしまって、シミが付いてしまった時にやってみてください。緑茶のカテキンと、鉄が反応して、黒い色になります。鉄瓶の塗料は、元々緑茶と鉄を水に1年浸けて作られています。
8.
最後に、一番水がたまりやすい、鉄瓶の中の注ぎ口の付け根部分。ここに水が貯まらないようにつくられていますが、お湯が残りやすいので気を付けて乾かしてください。蓋を載せる「姥口」という部分も布で拭いておくと安心です。



◆ 鉄瓶を使う時の注意点
1.
鉄瓶は毎日使ってきちんと後処理していても、まもなく中に赤い斑点のような錆びが出てきます。これはどんな鉄瓶でも一緒です。それでも絶対に中は触らないように。必ず使い続ければ安定して、そのうち湯垢がつきます。
2.
白っぽくなれば、それが湯垢です。使い始めよりもお湯が美味しくなっているはずです。 鉄瓶は使えば使うほどお湯がおいしくなります。
3.
ただ鉄瓶の中が白っぽくなるには最初の1〜2週間は毎日使います。急ぐ場合は、ボルビックや、エビアンなどのヨーロッパのお水は硬水(カルシウム豊富)なので、2〜3回沸騰させるだけで湯垢がつきます。最初の1ヶ月は頻繁に使わないと白っぽくはならないので、根気よく使い続けましょう。
4.
IHヒーターで鉄瓶を使う場合、小さな鉄瓶はセンサーが感知せず、電源が入らないことがあります。
5.
鉄瓶が一番錆びる方法、行為をご説明します。 それは 鉄瓶の中の一度沸騰したお湯が水になっていく、水温が下がっていく過程が一番鉄瓶の中を錆びさせます。 使い終わった後かならず乾燥させます。火鉢に鉄瓶を載せて、炭火が知らない間に弱くなって、鉄瓶の中のお湯の温度が下がるケースや、ガスコンロで沸かしたお湯を、そのまま火を止めて放置したケースです。こうした場合、たったの一回でけっこうな錆が発生します。熱いお湯が水になると鉄瓶の内側はかなり錆びるということを、覚えておいてください。
6.
鉄瓶を万が一錆びさせてしまった場合は赤さびでお湯が赤くなるかも知れません。その時は以下の処理を施してみます。




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★ 鉄瓶が錆びた時の処理方法 その1  鉄瓶が錆びてしまった時の対処方法をご説明します。使っていて、中がだいぶ錆びてしまった、赤錆が出るなどの対処方法です。(鉄が腐食するレベルのサビに対する対処法ではございません)
1.
緑茶の葉を不織布に入れたものを鉄瓶の中にいれる。
2.
水を鉄瓶の八分目までいれて煮出す。
3.
最低でも30分沸騰させる。可能なら8分目のお湯が2分目になるまで沸騰。
4.
お湯が2分目をきるくらいになったら一度中のお湯を捨てて、また水を八分目までいれる。
5.
このお湯が沸騰して、また二分目になるまで沸騰させ続ける。
6.
この1〜4の処理を3回繰り返す。
7.
緑茶は出がらしでOK。 緑茶のタンニンと錆が反応して、タンニン鉄が生まれます。鉄瓶の着色料は、そもそも水瓶に鉄を入れて赤くするか、そこに緑茶を入れて黒くするかで作ります。鉄瓶本来の黒は、緑茶で作れます。そして大概はこれで赤さびは止まり、お湯が赤いのも止まります。



★ 鉄瓶が錆びた時の処理方法 その2
1.
米のとぎ汁を鉄瓶の6〜7分目までいれて鉄瓶のフタを取り、弱火で何度か沸かします。 鉄瓶の内側にでんぷんの膜が出来て錆がお湯に出にくくなります。
2.
とぎ汁が赤く濁らなくなったらお使いいただけます。
3.
鉄瓶を直火で空焚きした時も同様の手法で対処いただけます。
4.
上記の方法を用いても鉄瓶から赤水が出てしまって、完璧に鉄瓶を錆びさせてしまった場合は修理が必要です。
5.
修理には1ヶ月以上かかり、費用は2万円程度かかります。30万円前後の鉄瓶と思い入れのある鉄瓶は修理する価値があります。
6.
鉄瓶を使っている途中、鉄瓶中に結構な赤い斑点の錆が出てきます。でも慌てずに、地道に上記の使い方を守って使ってください。必ず素敵な鉄瓶へ育っていきます。
7.
鉄瓶の中が完全に白くなれば、一晩水を入れっぱなしにしても錆びません。鉄瓶の中が白くなるのは、所有している期間でもなく、使用回数でもありません。長期間、お湯を沸騰させたかによります。




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■ 砂鉄の鉄瓶の注意事項  砂鉄は錆ませんが、2つ気をつけてください。それは、「空焚き」や、熱い状態の砂鉄鉄瓶に、「冷たい水を入れないこと」。熱せられた砂鉄の鉄瓶に、突然冷たいものを入れると割れてしまうことがあります。砂鉄の鉄瓶は、岩鉄(がんてつ)の鉄瓶。つまり通常の鉄瓶と違って、割れると修理ができません。